27頁(pp.161-186)この研究では, Hall[1990]やBasu and Fernald[1995]の生産関数アプローチに基づいて,日本の1946年第2四半期から2002年第4四半期までを対象に,第1次産業,第3次産業をも含めた37業種の生産性の順循環性を検討している.分析の結果,aggregateレベルおよび第2次産業では,順循環性が認められた.生産関数アプローチによれば,ほとんどの産業で規模に関する収穫一定が見られ,一国全体の経済活動が盛んになると生産性が上昇するというthe thick-market externalityの効果は認められなかった.また労働保蔵に関しては,90年代の製造業において若干その効果が認められた.したがって,日本の生産性の順循環性の多くは,純粋な技術ショックによる部分が大きいと考えられる.このことは、日本の90年代の長期不況からの回復を促す政策として、生産性の上昇を高める政策を行うことが重要であり、需要創出を狙う政策は意味が無いことを示唆する。 宮川努・櫻川幸恵・滝澤美帆