27頁(pp.35-61)本稿は,1970年から1995年までの日本の都道府県データを用いて,都道府県間の人々の移動を通じて,人々が社会資本をどのように評価していたかを実証的に分析している.全都道府県間の移動の結果から判断すると,人々は廃棄物処理と都市公園を評価している.公共賃貸住宅や水道はマイナスの評価である.大都市から非大都市への人口移動は,1980年代ごろまでは,航空,港湾といった生産型社会資本の増加はマイナスの評価である.1980年以降,工業用水道はプラスの影響をもっている.非大都市から大都市への人口移動は,1975年以降公共賃貸住宅や水道施設などの生活型社会資本が整備されている地域で多く生じる.大都市間の移動では,文教の社会資本が評価されている.ただし,1995年以降の移動では文教施設は人口移動に影響を及ぼさなくなっている.隣接都道府県間の移動は,道路社会資本が整備されている地域に多く生じている.