〈身体喪失〉の時代を生きる-島崎藤村『春』の位相
跡見学園女子大学短期大学部紀要第38集
P.1~P.12 『春』というテクストの大きな特徴の一つは身体に関する記述が頻出する点にある。その理由を同時代的状況から解明しようとしたのが本稿である。メディアの急速な発達がもたらす情報の氾濫によって、作家の書くという行為もバーチャル化されていく未体験の事態にどう対処するのか。それが『春』における藤村のテーマであったろう。