統合失調症における病識は、治療経過とともに変化するが、病識の変化のパターンに注目した研究は少ない。そこで163名の統合失調症患者を対象に、1年間の間隔をあけて、病識を2回評価した。そして病識が低い水準で安定している群(病識低群)、病識が高いレベルで安定している群(病識高群)、病識が変化した群(病識不安定群)に分類し、3群間でWAIS-IIIで評価した認知的能力およびPANSSで評価した精神症状を比較した。病識低群は、病識高群、病識安定群と比較して、全般的な認知的能力と言語理解が低い傾向が認められた。また、病識低群は、他の2群よりも有意に陽性症状が重症であることが示された。この結果から、病識が低く、また治療経過において病識の改善が認められない患者は、病識が高い患者や病識が変動する患者と比較して、言語に関わる認知的能力が低いこと、陽性症状が重症であることが示唆された。共著者:Yoshie Sakai, Satsuki Ito, Junya Matsumoto ほか7名(筆頭著者)