ボンエルフは1960年代にオランダで考え出された道路デザインで、道路空間が歴史的に担ってきた社会的機能を再生させることを目的に、あくまで歩行者優先の下、車と歩行者の共存を図る道路である。70年代、80年代とオランダ内で大量に整備され、またヨーロッパの他の国、さらには日本にも広がっていった。今日でもオランダには多くのボンエルフがあり、また新たなボンエルフも整備されつつある。本稿はオランダ内のボンエルフの半世紀にわたる変化の過程を追うことで、道路空間に社会的機能を再生するうえでの歴史的教訓を得ることを目的とする。車のスピードを抑制するために、当初はデザイン面での工夫に重点が置かれていたが、その後、法的規制へと重点は変化していった。またボンエルフの整備に対しては、しばしば地域住民は強く反対し、一方で、その整備を推進する市民団体がボンエルフの誕生以来、存在してきたことも分かった。