字音平声軽音節の音調についての試案―和語下降拍からの検討(特集越境する文学・語学研究)
国文学研究
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本論文は、平声軽音節の実現音調は従来言われているような高降りではなく、低降りに実現することがあったのではないかと推測したものである。その論拠は1. 『半井家本医心方』では、平声軽音節と和語下降拍とで、異なる差声のふるまいが認められる2. 和語の下降拍は消滅していない。したがって平声軽音節の衰退・消滅はその影響とは考えにくい3. 漢語のアクセント型に見られる和語相当の類別では、平声軽音節を有していたと推定されるもののみ対応を認めにくい、の3点である。