PP. 93-98. 1960-70 年代は、高度経済成長によるレジャーブーム、1964 年の東京オリンピックと1970 年の大阪万博の開催によって日本各地でホテル建設が相次いだ。内装には一流の芸術家たちが起用され、ホテルの建築デザインが飛躍的に前進した時期で、建築家の有名無名の如何にかかわらず当時のホテルには文化遺産価値が高いものが多い。しかし宿泊施設という宿命上、増改築が繰り返され歴史的遺産として認知され保存されるのは稀で、有名建築家の作品であっても老朽化し解体されることが少なくない。価値ある1960-70 年代のホテル建築が、健全なかたちで保存されるためには、当時のデザインの特徴や時代的変遷や作例を理解する必要があり、本稿はその概説とする。