PP. 25-57. 1951年に連合国の占領から解放された日本では、高度経済成長による国内レジャーブームで、1950年代に旅館の新築が相次いだ。モダニズム建築のホテル建設ラッシュが各地で起こるのは、1964年の東京オリンピックを目前にする1960年代前半で、ホテル関連雑誌や書籍の刊行も相次いだ。ホテルの内装には一流の芸術家たちが起用され、大規模な壁面装飾が流行した。工芸タイルやモザイク、レリーフ、巨大壁画が多用され、ジャパニーズ・モダンを築いたデザイナー家具が発展した。ホテル意匠に和の伝統モチーフが採用されることもあれば、ポップな原色主体のカラフルな色彩感覚で、アポロ計画の影響によるスペイシーな意匠も加わった。展望レストラン・スカイルームが設置されるようになるのもこの時代の傾向で、1950-60年代の建築雑誌に紹介された事例から、当時のホテル建築の特徴を分類・概観する。