PP. 51-74. 1995年にユネスコ世界遺産に登録されたナポリ歴史地区には、猥雑で庶民的な雰囲気がストリートアートと親和性が高く、もともと無名人たちによって数多く描かれていたものの、2015年以降からその質が急上昇している。それはナポリ版バンクシーともよばれているナポリ出身の壁画家ヨリットの活躍による影響が大きい。治安の悪い郊外の近代的な低所得層の集合住宅の壁を使って、イタリア各地・世界各地の作家たちが参加して、奇抜で社会的メッセージの込められた作品が続々と誕生するようになり、現在進行形で発展中だ。フォトジェニックなストリートアートはSNSで拡散されやすく、ナポリ市や各種団体もその制作に積極的に協力しており、今まさにナポリの新しい観光形態を築いている最中である。