1960~70(昭和30~50)年代は、新築ホテルの開業ラッシュが起こり、日本各地で数々のホテルが誕生したが、その屋号の命名にはある種の傾向があった。ホテルの所在地の地名に「観光」「国際」「温泉」「グランド」「ニュー」「ロイヤル」「ビュー」等といった特定の単語を組み合わせてつくることが多く、その幾つかはヨーロッパのホテルの命名法を踏襲している。ホテルが良い「眺望」を臨める立地にあることを示すさい、「ビュー」という語を含めて命名されることがよくあるが、ときには「ビュー」を使わずに、自然環境のジャンル名を入れてホテルの屋号とするパターンもある。そこで前稿では、湖畔・川沿いの良い眺めが望めるであろう「レーク」や「リバー」といったカタカタ英語を含んだホテル名を取り上げた。その続きとして本稿では、海浜・山岳の眺めを提供するホテルでよく行われた、「海浜」「シーサイド」「高原」「ハイランド」を含めて命名される事例を取り上げ、日欧でのその命名法の違いを明らかにする。