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日本統治期の台湾における近代観光の形成過程を、鉄道による旅客輸送、観光地の布置、イベントによる集客や旅行者の実態などの視点から検討した。当時の台湾では、欧米で発達した鉄道輸送を中核とした新しい旅行システムが構築された。総督府鉄道部は旅客に対して鉄道利用を促進する政策をとり、1920年代から30年代にかけて鉄道利用による観光の普及が確認できる。台湾の近代観光は、日本本土からの旅行者を誘致するだけではなく、支配体制が安定するにつれ、現地の人びと特に「台湾人」が広汎に観光に参加するようになった。