戦時観光を通じてみる1930年代後半の帝国日本の諸相(書評論文:K.J.ルオフ著『紀元二千六百年-消費と観光のナショナリズム』)
観光学評論
観光学術学会
Vol.3No.2
本書は、紀元二千六百年記念行事にかかわる日本本土および帝国内の諸活動について、大衆参加と大衆消費という切り口から読み解き、これまで統制下の暗い時代としてとらえられがちであった日中戦争から1940年に至る戦時に新たな光をあてた研究書である。1930年代の日本における観光の発達は、ナショナリズム、大衆消費・参加、旅客運輸と通信の国内的・国際的発達、植民地主義、全体主義的国家体制などの近代に特徴的な要素が相互に作用することによってはじめて可能になった。