日本統治期台湾の「視察・観光対象」ー「台湾鉄道旅行案内」を中心に
千住一・老川慶喜編『帝国日本の観光 政策・鉄道・外地』
日本経済評論社
台湾総督府編集発行の『台湾鉄道旅行案内』1916年版と同1930年版に記載された沿線情報を資源特性別に分析した。通常の鉄道旅行案内であれば記載の中心になるはずの「寺廟・史蹟・遺跡等」と「自然・景勝地」の記載傾向は相対的に低く、他方で「市街・村落・港湾等」と「日治期建築物・産業・施設」の比率が極めて高い。ここから「台湾鉄道旅行案内」に日本統治の成果を強調する編集方針があることが読み取れる。この記載傾向は台湾総督編集の「史蹟名勝保存事業関連報告書」と比較することによってさらに明らかになった。