Motherhood in Paralysis: Slavery in Beloved
津田塾大学
『論集』
21
奴隷捕獲人に追い詰められた逃亡奴隷の母親が、幼い娘に「奴隷としての生」より「自由人としての死」を与えた、実際の母親による1856年の子殺し事件、マーガレット・ガーナー(Margaret Garner)事件を題材としたトニ・モリスン(Toni Morrison)の小説『ビラヴド』(Beloved)において、奴隷制というシステムがどのように奴隷の母親を追い詰めるのか、なぜ母性が殺人という対極の暴力にまでに転化させられたのかをテーマに、奴隷制下で母性が麻痺させられる過程と背景を明らかにしている。