1920年代アメリカの「ハーレム・ルネサンス」(Harlem Renaissance:ニューヨークの黒人地区ハーレムから広がったアフリカ系アメリカ人の人種的覚醒と「黒人」芸術・文化の興隆)で活躍したアフリカ系アメリカ人(黒人)女性作家ネラ・ラーセン(Nella Larsen)の自伝的小説『流砂』(Quicksand, 1928)と『パッシング』(Passing, 1929)を取り上げ、混血としての葛藤、人種差別への憤り、断筆への経緯を手がかりに人種・階級・国家という境界線に対する作家ラーセンの意識を明らかにした。