悲劇から試練へ:スレイヴ・ナラティヴにおける女たちの主体的記憶
順天堂大学
『医療看護研究』
7.1
19世紀中葉から20世紀初頭にかけて出版されたスレイヴ・ナラティヴ(奴隷体験記)のうち、女性によるナラティヴは約1割にすぎない。その中から4作品を取り上げ、男性ナラティヴと女性ナラティヴの女性像の違いについて論じた。男性ナラティヴでは悲劇として語られる奴隷女性の物語は、女性ナラティヴでは試練や自己実現の経験として提示されている。本論は、奴隷制の二重(労働・性)の被害を女性の視点から読み解き、女性特有の奴隷制体験の実相が明らかにしている。