大正から昭和初期にかけて活躍した社会思想家・河合栄治郎は、これまで、ファシズムやマルキシズムと戦った「戦闘的自由主義者」、多くの人材を育てた「人生の教師」といった側面が強調され、その交友関係に関してもそうした点を中心に論じられてきた。しかし、筆者が河合の遺族から譲り受けた書簡、日記、読書ノートをはじめとする資料群(「河合栄治郎関係文書」)を解読する過程で、多様な交友関係が明らかになってきた。本稿は、「河合栄治郎関係文書」の未公開資料の分析を通じて、芥川龍之介、有島武郎、野上弥生子といった同時代の著名な作家との交友関係を明らかにしたものである。河合は彼らと交流することで少なからざる影響を受けていたことを指摘した。