20世紀ファッションの生成の背景としてのバレエ・リュス ―ニジンスキーの「牧神」における身体性―
服飾文化学会誌
Vol.5 No.1
バレエ・リュスの作品『牧神の午後』を取り上げ、主役を演じたニジンスキーのパフォーマンスを検討した。ニジンスキーはバレエの伝統的様式化を一切加えない身体のリアリティを、そのコスチュームとダンスによって表出し、新しい身体性を提示した。また性行為を暗示するパフォーマンスによって人間の抱える、強烈な性の欲望をあからさまに表現した。この公演には激しい非難が浴びせられたが、その話題性の大きさにより、当時の社会の身体意識、身体表現に関わる心性の変化を促したであろうことが推察される。