PP.148-176(29頁)
ヘーゲルの法・政治哲学を反民主主義と位置づける根強い理解の背景には、ヘーゲルが個々人にルソー的な一般意志の発動を認めなかったとするテキスト理解が控えている。しかし、この理解は、ヘーゲルが「人民」の概念をルソー的な物理的「集合体」ではなく、「精神」として捉えたことを無視している。ヘーゲルは、ルソー的には体制外的な「異常の人」としての「立法者」を、〈普通の人〉としての「政治的国家」として体制内化し、そのことによって人民集会的な市民社会と、その特殊意志を超越する一般意志という政治的領域を分析的に捉え、、後者の領域に各人が機能分担しながら関与することで、普遍的意志を担いうると考えたのである。