ヘーゲルの「世界史の哲学」におけるオリエント世界とそのインド世界の位置づけ
神山伸弘編著『ヘーゲルとオリエント――ヘーゲル世界史哲学にオリエント世界像を結ばせた文化接触資料とその世界像の反歴史性――』(科学研究費補助金基盤研究(B) 課題番号21320008 研究成果報告書),神山伸弘(跡見学園女子大学・文学部・教授)
39-52頁。 ヘーゲルは、聖書主義的な「普遍史」理解を乗り越え、ヘルダー的な歴史哲学とも異なり、オリエント世界を実体性の世界として位置づけるが、同時に主体的自由が発生するプロセスも明らかにしている。ヘーゲルによるインド世界論批判は、F・シュレーゲルのインド憧憬論批判ともなっている。オリエント各地域の原理は実在的なつながりを持たないが、その進展のなかで自由な主体性が露呈してくるのである。ヘーゲルは、一貫して経験主義的にオリエントに接している。