二つのインド――ヘーゲル「世界史哲学講義」(一八二二・二三年ベルリン)オリエント論の複線構造――
『跡見学園女子大学文学部紀要』(跡見学園女子大学)第48号
P121-132.ヘーゲルは、一八二二年・二三年の最初の「世界史哲学講義」において、バラモン教の「本来のインド」と「仏教のインド」という「二つのインド」を明確に区別して論じた。このさい、前者は、専制的な自然の立場であり、後者はそれを廃棄する自由の立場である。ヘーゲルのオリエント論の進行からすると、中国の原理とインドの原理を統合するのはペルシアとなるが、「仏教のインド」にも現実的にそれと同等の位置づけを与えることができる。