PP81-96.ヘーゲルは、カントの問題意識を受け継ぎつつ、〈生命〉ある《自由》の《経験》とその否定態である〈死に対する戦慄〉という感性的なものがあることを摘出することにより、《自由》を根底的に無規定なものとして、カントの形式主義に同調することができた。また、〈生命〉ある《自由》が《経験》とともに理解されることにより、《自由》の肯定的に規定的なものが教養形成されざるをえないものとして概念的に把握できた。そして、《自由》の概念に《経験》が含まれていることを洞察できたことによって、はじめて、〈人倫態〉を《自由》の概念の展開として示すことができた。これらのことを、ヘーゲルの『精神の現象学』、『法の哲学』及びその自家用本ノートに即して解明した。