ヘーゲル『論理学』初版に依拠しながら、「向一存在」(Für eines seyn, Sein-für-Eines)なるものの原語レベルでの正確な理解に回帰しつつ、その意味を明確にする課題を達成する論考。このため、「Was für einer? の意味」をまず明確にし、さらに「für の意味」の再確認にまでこれを掘り下げ、これらに基づいてヘーゲルの「Was für einer?」と題する「註解」を対訳してテキスト理解を平明にし、従来の「向一存在」の訳を廃棄して、それを「〈一つのもの〉としての存在」として理解しなければならないことを論じ、「「観念態」における für eines seyn」の意味を総括した。なお、「付論」として、「〈他のものとしての存在〉 Seyn für Anderes」、「〈なにものか〉Etwas」の意味も論じた。もって、ヘーゲルの論理の神秘化に対する批判とした。