人文学を維持し左翼を占めること
『跡見学園女子大学人文学フォーラム』
跡見学園女子大学
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人文学の根本問題は、人間研究、それも「人間の精神」の研究と、それが表現された行為としてとらえる文献主義にある。この文献主義は文献批判と不可分であり、その批判が権力や権威に抵触するときどう処するかで、人文主義の真価が問われる。この問題を、カントの「諸学部の争い」をもとに考察した。実学が、政府の権力と学問の権威によって「幸せ」を引き出すものであるのに対し、文学部(哲学部)は、「理性の関心を配慮する」ものとして「真理の保護を託されて」おり、学識の左翼として「真実の善」を考究する学問領域である。