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2009年3月6日、駒澤大学246大学会館で行われた「日本ヘーゲル学会国際シンポジウム「ヘーゲルの体系の見直し Wie systematisch ist Hegels System?」」で行った研究発表“Die Natur und die Notwendigkeit in Hegels Rechtsphilosophie.”の内容を日本語論文としたもの。
ヘーゲルの『法の哲学』は、「自然」とは区別された「自由」を地盤として客観的な精神の世界を展開している。このことは、ヘーゲルの法哲学を自然とは無縁の地平で理解しようとする立場に十分な根拠を与えるだろう。しかし、ヘーゲルの法哲学には、《自然から自然へ》という論脈も明確に存在している。《出発点となる自然》は、「自由な意志」の内容上の「自然」である「衝動、欲求、傾向」であるが、《到着点となる自然》は、「第二の自然」としての「精神の世界」、すなわち「法のシステム」であり「人倫的なものの習慣」である。これらの《出発点》と《到着点》との間には連続性を認める必要がある。