83-105頁.
自由が差異を生み出す以上、差異を承認しながら特殊領域で平等と同権を再興せざるをえない。家族では、愛によって共同体が意志され、自然的で精神的な差異が尊重されるはずだが、これを拒否する民主主義は家族の解体を必然的とする。政治的な共同体の再生産のためには、差異の承認がなされる家族のあり方を追求せざるをえない。市民社会では、人格の特殊な活動の差異が職業身分の区別となるが、これが民主主義的でないとすれば、個人の名誉を無視することになる。国家では、政治的決定に客観的な根拠を求めるならば、普遍的身分によって政府を組織せざるをえないが、民意をはかる議会も、普遍的なものにコミットしている者によって構成せざるをえない。この体制は、ヘーゲルによれば立憲君主制だが、人民を差異に基づいて有機的に位置づけた民主主義の具体化となっている。