8頁(pp.35-42)
トロロープの The American Senator は出版当時は、一般に評判が良くなかった。これは主人公アメリカ人の Senator(Elias Gotobed)が示す英国批判に、多くの読者や批評家が反感を抱いたことが大きい。しかし、この小説を今後の英国のあるべき姿を探った ‘Condition‐of‐England' novel として捉えると、Senator こそがその要となる人物であることがわかる。Senatorのキャラクターは概して「無知でこっけいなヤンキー」と片づけられがちだが、実は国教会など英国の諸制度に潜む矛盾を指摘する彼の言葉は、しばしばトロロープ自身の考えを代弁するものである。