1874年の『レディー・アナ』でトロロープはラディカルな労働者のヒーロー、ダニエル・スウェイトとレディー・アナの恋愛と結婚を描き、中流階級の読者に衝撃を与えた。保守的と一般に言われるトロロープであるが、彼がダニエルとアナの結婚を是認し、二人のオーストラリア移住を新しい門出としてポジティブに捉えていることは明らかである。これには1867年の選挙法改正、そしてトロロープ自身の息子のオーストラリア移住などの影響があると思われる。今日あまり読まれていないマイナーな作品であるが、トロロープのリベラルな面が認められ、興味深い。