The Fixed Periodはアンソニー・トロロープの唯一の未来小説である。この小説はこれまで「トロロープらしくない作品」として高く評価されなかったが、「安楽死」をテーマにするなど、今日でも意義深い作品である。この作品でトロロープは一人称の語りを試み、主人公ネヴァーベンドの秘められた野心や傲慢さを露呈する。しかし、その一方で、トロロープは彼の微妙な感情の揺れを描き、読者の反応を和らげている。さらに、特に小説の後半において、ネヴァーベンドからブリタニュラを「救う」イギリスの描写にも曖昧さが認められる。そこに、母国の帝国主義に対するトロロープのアンビヴァレントな姿勢を見ることができる。