10頁(pp.35-44)
ギャスケルの作品でしばしば重要なモチーフとなっている「衣服」に注目し、代表作の一つであるMary Bartonにおける衣服と女性キャラクターとの関わりについて考察した。この小説における衣服ー特に他人の衣服への気遣いは、貧しい労働者のコミュニティにおける温かい心のつながり、扶助の精神を示す。またヒロインの心の成長も衣服との関わりから微妙に描かれている。プライベートな世界に生きる女たちが示す同胞愛、利他主義の精神は間接的にではあるが、労働者と雇用者という二つの世界の隔絶に一条の救いの光を放っている。