『ユースタス家のダイヤモンド』ートロロープと「センセーション・ノヴェル」ー
『跡見学園女子大学 人文学フォーラム』第23号
アンソニー・トロロープの『ユースタス・ダイヤモンド』を、ウィルキー・コリンズの『月長石』との比較を通して考察した。トロロープは当時流行していたセンセーション・ノヴェルを意識し、その要素を取り入れつつも、最終的にそれを裏切ることで、彼独自の魅力ある作品を創り上げた。『ユースタス・ダイヤモンド』には、作者と読者の「信頼関係」が紡ぎ出すコミカルな世界というトロロープが前期の作品から追求し続けた小説観が映し出されている。