トロロープと西インド諸島ージャマイカの「黒い人」を中心に
『<終わり>への遡行ーポストコロニアリズムの歴史と使命』
英宝社
22頁(pp.50-71) トロロープは一般に帝国主義的な作家と見られているが、作品に散見するアイロニーは彼が保守的な立場に必ずしも安住していたのではないことを示唆している。たとえば1859年に出された西インド諸島の旅行記に認められるトロロープのイギリスの伝統的な価値に対する懐疑的な態度は、約10年後に書かれた小説、『彼は自分が正しいと知っていた』において、大英帝国の植民地に対する姿勢を批判する強烈なアイロニーへと発展した。