日本認知言語学会第17回大会での発表の内容を論文として書き改めたもの。発表採択時には査読有り。連結的視覚動詞のうち、look は it と結びつき、appear と seem は so と結びつく傾向が強い。この論考では、知覚主体が命題の真理値に対してactive にコミットしていることを表す知覚動詞の後には it が続き、active ではないコミットメントを表す知覚動詞の後には so が続くとする仮説を立て、これが、Cushing (1972) の知見(補文の命題の真理値に対して、文の主語が definite の stance をとる場合、命題は itとして代名詞化され、definite ではない stance をとる場合は so として代名詞化される)によって支持されることを示した。
さらに、この論考は、look のみならずsound, feel, smell, taste といった連結的知覚動詞もitを補語とする傾向が強いのは、知覚主体がその五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)を使うことによって命題の真偽に確信をもつからであると説明した。