20世紀前半に多くの業績を残した言語学者・英文法家 Otto Jespersen は、foot it, queen it, rough it などの、名詞派生動詞/名詞派生形容詞 と不特定の it (unspecified it) から成る成句を分析し、5つのタイプに分類した。しかし、意味的分析に基づき分類しているものは、そのうちの2つに過ぎなかった。本稿は、この Jespersen の分類を現代英語の視点から意味的に再考することを目的として書かれた。 まず、OED を始めとする現代英語辞書の情報に基づき、Jespersen が取り上げた当該型の成句のうち、現代では廃用あるいは殆ど使われないもの、辞書に成句として登場しないもの、句としての成立過程が不明なため意味分析が困難なものを分析対象から除き、逆に、Jespersen の論考では扱っていない、現代英語に現れる当該型成句を分析の対象に加えた。次に、原形となる名詞あるいは形容詞そのものの意味と成句全体の意味との関係に基づき、当該成句を再分類し、これらの成句が5つの意味カテゴリーに区分できることを示した。