この論考は、定評ある3冊の英文法書(Quirk et al. 1985; Declerck 1991; Huddleston & Pullum 2002)の、日本語の「そうする・同じことをする」に相当する do it とdo so の意味記述を精査し、これらの書が両代用形 (pro-form)の違いを ‘same’, ‘same kind’, ‘same type’, ‘specific’ といったキーワードを用いて説明していることに疑問を呈するものである。このような説明は、do it と do so の用法の違いに関心を持つ非英語母語話者を困惑させることになりかねない。なぜならば、そもそも上記の理論語の定義がなされていないため、上記文法書の筆者たちの想定を超えて、'same' な物・事と 'same kind/type’ なそれとの間と、'specific'な物・事と 'unspecific'なそれとの間の線引きが、個々の発話者あるいは発話のコンテクストによって異なる可能性があるからである。