日本の宗教美術は、従来鎌倉時代までの古い時代のものが優れているとされ、それ以降には論ずるに足る作品はないと見做されてきた。リアリズムの技術のみを基準とすれば、そのような図式も受け入れざるを得ないが、視点を変えて日本的なオリジナリティの発露を重視する立場に立つとき、室町から江戸に至る時期は、中国的な価値観をようやく脱して、庶民的な感覚を取り込みながら、日本的な美意識を育てた時期と見なせるのではないか。とりわけ円空や白隠らの僧侶の造形は内なる仏を形にしたものであり、世界に誇りうる大きな達成であると主張した。