pp.143-159
沖縄ではカミダーリなどの憑依が病院で治療されるべきものとして社会から排除・隔離されなかった要因を、精神医療史から明らかにすることを試みた。その結果、戦前沖縄には精神病院が無かった点、戦後はカミダーリなどの憑依を「病気」という枠に当てはめて治療すべきものとすることに疑問がなげかけられ、「憑依(狂気)の有用性」が精神科医に指摘された点などにより、たびたび為政者によるシャーマニズムの弾圧が沖縄でもあったにもかかわらず、憑依の一部は「聖なる狂気」として今なお神聖視され続けていることを指摘した。