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近代化と文化変容の視点から、沖縄における「死」の現在を考察した。その結果、死者と生者は地続きの存在で、死者は葬儀や法事により丁寧に祖霊化されるという伝統的な死生観は、火葬の普及・葬儀社の利用・僧侶への依頼という利便性を重視する近代化・本土化の影響を受け、大きく変化したことがわかった。特に、死の世界を口寄せなどを通じて生々しく感じさせてきたユタ(シャーマン)の役割が軽視され始めたことが、ユタと僧侶をめぐるコンフリクトの事例などから浮かび上がり、沖縄でも本土と同様に死の意味が見出しにくくなってきていることを指摘した。