玉木一兵論―引き裂かれる近代的自我と狂気へのまなざし―
沖縄文学の諸相 沖縄文学研究会研究報告書
pp.57-63 本稿では、現代沖縄文学における狂気への描写・まなざしを明らかにするため、作家兼ソーシャルワーカーである玉木一兵を取り上げ、作品分析を行った。その結果、玉木の精神障害者への共感性の高いまなざしと、権力的で威圧的な近代医療(病院)とそれを容認する社会への怒りが、作品の根底にあることがわかった。また、そのような近代合理性と患者らの非合理性・前近代性とのはざまで玉木自身も引き裂かれ、苦悩している姿を指摘し、疎外された近代知識人のありようを明らかにした。