pp.47-59.2006年1月にハマースがパレスチナ立法議会選挙で勝利した後、欧米諸国はイスラエル承認を拒否するハマース新内閣の承認を拒否し、ボイコットや援助削減で応じた。2007年3月にハマースはファタハとの挙国一致内閣を成立させるが、ファタハとの対立は悪化の一途をたどり、6月にハマースはガザを武力制圧する。以来イスラエルは自国の安全保障を理由にガザを封鎖し、2008年末にはガザに侵攻する。このような状況下、ハマースは和平停滞の原因と見なされがちであるが、実際には状況の変化に応じて変容しており、暴力を放棄するには至らないが現実主義も見せている。本稿は政治組織としてのハマースの変容を整理し、イスラエルとの妥協の可能性を探る素材を提示する。