pp.73-81.「アラブの春」が可視化したアラブ世界における民主化・イスラーム政治運動・パレスチナへの共感的世論という三要素の強力な結合と連動は、中長期的にアラブ・イスラエル関係の不安定化と、パレスチナ問題の流動化をもたらす兆しを見せている。これに対しイスラエル側、特に現右派政権は「アラブの春」を自国の安全保障やアラブ諸国の経済問題という次元のみで議論し、パレスチナ問題への影響を過小評価しがちである。本稿では「アラブの春」とパレスチナ問題の連動を直視せず専ら安全保障の強化に執着し続ける右派政権の反応の背景を、歴史的・中長期的視点から簡単に考察する。