本稿では、日本語母語話者が学習者の日本語運用を評価する際に、場面により評価の観点は変化するのかを明らかにすることを目的に、ロールプレイビデオ視聴後のアンケートの記述内容を分析した。その結果、次のような、場面による評価の観点の違いがあることが明らかになった。まず、雑談場面では言語運用そのものがスムーズに行われているかが着目される傾向が見られた。それに対し交渉場面では、言語運用を通じて、言語運用の背景にある話し手の交渉に臨む態度・姿勢にまで踏む込んで評価がなされる傾向が見られた。本稿で明らかになったことは日本語教師が会話の授業を計画するうえで有益な情報になると考えられる。