英国の美術教師マリオン・リチャードソンの考案した教育方法は、18世紀の創設以来主流だった美術アカデミーに準じて模写と模倣を繰り返すやり方に反し、子どもの自発的な着想と想像力を重視するものだった。それは、惰性的な自然模倣を嫌悪した彼女と同時代の美術批評家フライが提唱したモダンアートに関する理論と親和性を示しており、個人の感覚に発する形態把握とそのパターン化という特徴をもっていた。本稿では、創造性を「アート」のみならず、「デザイン」においても実現することができると主張した彼女の革新的な取組みを"pattern"概念を手がかりとして検証する。