本稿では、「話者不在の発話」や「誰にも占有されていないパースペクティヴ」という概念を提唱したアン・バンフィールドの主張を検証するために、彼女が拠り所とするブルームズベリー・グループに共通して見出せる一つの問題圏を取り上げた。とりわけ筆者が長く研究してきた美術批評家ロジャー・フライ(Roger Fry, 1866-1934)の絵画論へと議論を進め、バンフィールドが唱えた「誰にも占有されていないパースペクティヴ」の内実を明らかにするとともに、この検証が分析哲学の地平を広げる一助となることを目指した。