本研究では,日本の心理専門職と大学院生を対象に, 心の健康に関わる知識・知見を多様な人々に伝達・普及する諸活動への態度(社会的普及志向)の実態と関連要因を探索的に検討することを目的とした。Web調査により, 公認心理師養成大学院や臨床心理士指定大学院(修士課程・博士前期課程)の大学院生70名,臨床心理士等の心理専門職102名,計172名から有効回答を得た。その結果, 心理専門職・大学院生共に, 日々の臨床実践で関わる機会が多い対象者や, 普及の場として従来より実践されてきた方法には, 前向きな社会的普及志向を示していた一方で, 抵抗感を有している普及対象や方法もみられた。また, 心理専門職・大学院生ごとに違いはみられたものの, 研究活動に関わる興味・関心や自信, 大学院における研究の教育訓練環境や研究経験, エビデンスに基づく臨床実践への態度等が, 社会的普及志向と直接的または間接的に肯定的な関連を示すことが明らかとなった。