本稿では、近時のサイバー犯罪における現状と課題を、法的紛争・訴訟に対処するための一連の科学的調査手法・技術であるデジタル・フォレンジックに注目して考察した。サイバー空間の犯罪者の技術的能力は高く、電磁的記録に痕跡データを残さない場合も多いことや、ICT技術のプライバシー保護の技術が逆に作用し、犯罪者の特定は困難になっている。さらに、デジタル・フォレンジックの手続き過程での物理コピーや情報収集・解析に関連して著作権やプライバシー保護に関する法的課題があること、また、改正警察法に対する期待と懸念があることを示した。