本稿は、現在深刻化しているサイバーハラスメントの課題と対策について検討するものである。SNSで多くの誹謗中傷を受け、その後に自殺するという2020年5月の事件を契機にインターネット上の誹謗中傷への対策強化を求める声が高まり、官民の様々な取り組みが強化されることとなった。本稿ではその対策としてのプロバイダ責任制限法改正における新たな裁判手続の概要と発信者情報開示制度の課題について整理し、名誉侵害罪の保護法益について検討を加え、侮辱罪改正をめぐる議論とその課題について考察した。その結果、多様化するサイバーハラスメントへの対策は取られつつあるが必ずしも十分とはいず、被害者救済と表現の自由との調和においても課題があることを指摘した。