近年のSNSの隆盛により、報道機関だけでなく、一般の人々が情報発信を容易にできるようになった。本稿では、実名報道について、メディアスクラム等による報道被害の実例とともに、インターネットなど情報技術やSNSが発達した現代的な課題と、報道被害を受けた被害者等の権利救済の方法について法的検討を行った。
その結果、警察による実名発表については明確な法的な根拠はないと解されることを示した。そして、被害者の同意なき実名発表は、プライバシーや名誉が被侵害利益となり原則として国家賠償法上違法となり、また、被害者の同意なき場合の実名報道は、原則として違法であり、不法行為が成立すると解されることを明らかにした。実名の公表の在り方は、現代の情報技術の発達や運用方法の変化に合わせて判断されるべきであり、その対応は、被害者のみならず被疑者や特定少年等の加害者、そしてそれぞれの家族においても配慮されるべきであることを示した。