デュポンについては、その経営戦略や近代的な経営管理体制が先駆的であるとして経営学・経営史上で多くの研究がなされている。しかし、民間活動と軍事活動は別々に研究されることが多く、デュポンの民間と軍事における諸活動を関連づけた研究は必ずしも十分とはいえない。
そこで本稿では、デュポンの歩みについて、火薬・ナイロン・原子爆弾を中心に、化学工学の視点から事業多角化の連続性を明らかにした。また、各国政府や他の競業組織そして世論をどのように操作してきたかという点について、ナイ委員会(「軍需産業調査特別委員会」)の報告書に注目して考察した。企業研究をする上では、これまでのような成長と革新を中心とした枠組を超える視座を持つことも、当該企業の本質を把握するために必要であると考えられる。