亡命者への道 ― A Portrait of the Artist as a Young Man の場合―
英米文学手帖
第39号
主人公は芸術を成就させる場所を大陸へ求めてアイルランドを出立するが、彼を母国から駆り立てる強大な力の存在を考えると、出立を社会的コンテクストの中において捉える必要が生じる。彼は国家に浸透している支配的イデオロギーが自己の中に流れ込むことに抵抗していた。出立の社会的背景を視野に入れたときに浮上してくるのは、個人とイデオロギーの抜き差しならない関係である。